コーヒ豆の産地(2) アフリカ編
2025年9月18日
1.コーヒーベルト(再)
コーヒーの産地は赤道を挟んで南北25度の緯度の範囲に集中しています。この地域は、気候や土壌がコーヒの栽培に適しており、この産地帯を『コーヒーベルト』あるいは『コーヒーゾーン』と呼びます。
コーヒーの主要な生産国として有名なブラジル エチオピア インドネシアなど、すべてほぼ全国土がこのコーヒーベルトの中にすっぽりと納まっています。
今回紹介するアフリカは、コーヒーノキの原産地でです。カネフォラ種(ロブスタ種)はコンゴで発見され、アラビカ種の原産国はエチオピアです。また、カネフォラ種とともにアラビカ種の親とされるユーゲニオイデス種の原生林は、南スーダンからブルンジにかけてビクトリア湖の西側の地域に存在し、まさにコーヒーの故郷といえる大陸です。
2.各大陸ごとの主な産出国(続き)
(1)アメリカ大陸
(2)アフリカ
エチオピア
アラビカ種コーヒーの原産地と知られる、コーヒーの故郷です。珈琲という呼び名がエチオピアのカッファ(kaffa)地方の名称から派生したとの説もあります。コーヒー生産量は55.9万トン(2023年)と世界第5位を誇りアフリカ一です。日本での輸入順位は4位から6位です。イエメンと並び「モカ」の生産国としても知られています。これは、かつてエチオピアとイエメンでしかコーヒーの生産がなされていない頃イエメンのモカ港を通じてコーヒーがヨーロッパへと輸出されていたためです。
エチオピアのコーヒーの特徴はナチュラルではフルーティーな香りと甘みが強く、ウォッシュドではクリーンでフルーツのような穏やかな酸味があり、いずれもあまり苦みがないとされています。
最大の地域がシダモ地方です。エチオピア国内で最も良質のコーヒーが採れるイルガチェフェをはじめ、最近イルガチェフェに次ぐ品質といわれるグジ、近年のCOEで多くの入選を果たしているシダモ州などがこの地方に含まれており、シダモ州、南エチオピア州、オロミア州の東半分と広範囲に及んでおり、一言でモカシダモといっても州・県・郡が特定されているわけではありません。
他に、もっとも古くからコーヒーの産地として知られたハラー、コーヒー研究所のあるジマ・リム、コーヒーの名称由来の地カッファ、近年ゲイシャ種の故郷として脚光を浴びるベンチマジなど有名な産地があります。
品種は、原生種が多いですがジマコーヒー研究所で選抜育成された74110,74112,74158,74165などの品種の栽培も行われるようになっており、近年行われるようになったCOE(カップオブエクセレンス)では入賞のほとんどを占めています。
※ エチオピアのテロワールについては三神亮氏が詳しく解説しているページがあります。三神亮氏のブログ「コーヒー無限の可能性」テロワール編(エチオピアの章)をご参照ください。
当店で購入可能なエチオピア銘柄
エチオピアゲシャビレッジ農園 チャカ ゲイシャ ナチュラル
エチオピア モカ イルガチェフG1 コチャレ アナエロビック
エチオピア モカ シダモG4 トラディショナル
ウガンダ
ウガンダは、コーヒー生産国としての認知度はあまり高くありませんが、生産量は38.4万トン世界7位(2023年)とアフリカで2位のコーヒー生産国です。また、日本での輸入順位は10位前後と比較的多いですが、銘柄として流通するものは極めて僅かしかありません。ウガンダでは在来種のロブスタコーヒーが現在でも自生しており、そのため生産量のほとんどがロブスタ種となっています。アラビカ種の産地は、僅かに、ビクトリア湖北西のケニアとの国境付近、南スーダン南のナイル川西岸、コンゴ国境近くでアルバート湖南側にあたる地域に点在するだけです。品種はケント種、ティピカ種、SL14、SL28と隣国ケニアとほぼ同一品種となっています。
中央アフリカ
中央アフリカ共和国では、長い間ロブスタ種コーヒーの産地でしたが、近年アラビカ種の生産量が急増しているとのことで、2023年の生産量は31.6万トンと世界10位ですが日本への輸入量は上位24か国には含まれておらず、日本国内ではほとんど流通していないようです。2022年2023年の生産量ではグアテマラよりも多いのは驚きです。
ギニア
ギニア共和国も中央アフリカ同様生産量が急増している国です。2023年の生産量は20万トンで世界12位ですが、日本への輸入は上位24か国には含まれておらず、中央アフリカ同様に生産内容の詳細は不明です。
この2か国の動向については、今後注目する必要があると思われます。
コートジボアール
コートジボワールのコーヒー生産は9.1万トン(2023年)と世界17位です。コートジボワールでは主にロブスタ種が生産されています。2000年には38万トンものコーヒーが生産されていましたが、その後の政情不安により減少し、現在では10万トンを下回っています。コートジボワールではコーヒーは主要な輸出産品の一つですが、標高が低い国土のコートじばわーるではロブスタ種の生産に限られています。
タンザニア
キリマンジャロの特定銘柄で知られ世界三大コーヒー※の一つにも数えられています。タンザニアは、わが国ではエチオピアと並び知られるアフリカのコーヒー生産国で、生産量は6.3万トン世界19位(2023年)とほかの主要生産国と比べるとかなり見劣りがします。しかし、わが国の輸入量は1.2万トン(2023年)と第7位で、ブラジル・ベトナム・コロンビアなどに次ぎ、エチオピア・グアテマラ・インドネシアと並ぶ主要なコーヒー生産国であることがわかります。生産量の約70%がアラビカ種、30%がロブスタ種です。当初キリマンジャロの銘柄名は、キリマンジャロ地区のアラビカ種コーヒーに限定されていましたが、現在ではブコバ地区を除くタンザニア全土で採れたアラビカコーヒーを指すようになっています。フルーティーな酸味と黒糖やベリー系の甘み、クリアで切れの良い後味が特徴です。
当店で購入可能なタンザニア銘柄
タンザニア キリマンジャロAA
コンゴ民主共和国
コンゴ民主共和国は、ロブスタ種の主要な原産国として知られています。1989年にベルギーの植民地時代に発見され、その後、ベルギー人入植者たちがプランテーションをつくり現地の人たちを奴隷のように働かせ、コーヒー産業を急速に発展させました。1960年に独立すると、外国人排斥やインフラ整備の遅れからプランテーションが減少。大規模農園によるコーヒー生産は壊滅的打撃を受けます。その後もコンゴ戦争の影響や”いちょう病”の蔓延などにより生産は低迷しています。2023年の生産量は6.2万トンと世界20位で我が国の輸入については上位24位までに入ってはいません。
マダガスカル
マダガスカルのコーヒー生産量は、4.9万トンと2023年現在世界22位です。かつては、マダガスカル・ブルボンというシルクのようになめらかで甘く濃厚な希少な品集が有名でしたが、さび病の影響で壊滅し現在はほとんどがロブスタ種となっています。現在栽培されているアラビカ種はレユニオン(ブルボン)島から入ったものではなく、壊滅後他の地域から移入されたもののようです(イエローブルボンやレッドブルボンという表記が示しています)。
ケニア
ケニアは、コーヒーの生産国としては23位4.9万トン(2023年)ですが、アフリカでは主要なアラビカ種の生産国で日本への輸入は17位となっています。英国統治時代はもとより独立後も、国を挙げて高品質なコーヒーの生産に取り組んでおり、かつてイギリス統治下のスコット研究所でタンザニア原種から選抜分離されたSL28やSL35や独自に交配誕生させたルイ11などの優良品種を栽培しています。火山性土壌を活用したコーヒー豆生産としっかり管理されたウォッシングステーションにより競技会での豆の選択においても「迷ったらケニアにしておけ」といわれるほどの信頼を得ています。ニエリ、キリニャガ、キアンブなどが良質な産地として有名です。
当店で購入可能なケニア銘柄
ケニア ニエリ地区 ガタイシAA トマトレッド
ルワンダ
ルワンダはコーヒー生産国として知られるようになったのは比較的最近で、1994年の大虐殺後10年ほどたって復興のシンボルとしてコーヒーが扱われるようになりました。2004年、米国国際開発庁の支援で国内第一号のウォッシングステーションが建設されました。ルワンダのコーヒー生産は2.7万トン世界第28位となっています。日本への輸入では19位となっており、近年のスペシャルティコーヒーへの取り組みの結果、年々品質を向上させています。
当店で購入可能なルワンダ銘柄
ルワンダ ギクンビ地区 カリシンビWS アナエロビック
ブルンジ
ブルンジは1993年の内戦の結果、コーヒー生産量が急落しました。紛争後の復興のためにコーヒー生産への投資は極めて重要視されています。生産量・品質向上の取り組みを続けていますが、1980年代の水準まではいまだ回復していません。地理的条件は、栽培に必要な標高と気候がそろっており、2008年スペシャルティコーヒーの分野に参入し、トレーサビリティの高い取引が可能となってきています。2023年の生産量は約1万トンと世界37位です。日本への輸入は20トン前後で20~24位となっています。
この他にも、世界生産32位のトーゴや33位のアンゴラなどの生産国があります。
※参考文献 ジェームス・ホフマン著 丸山健太郎監修『スペシャルティコーヒー大事典 2nd Edition 普及版』(日経ナショナル ジオグラフィック)、堀口俊英著『スペシャルティコーヒーのテイスティング』(旭屋出版)、全日本コーヒー協会『調査資料』(調査データ | 全日本コーヒー協会)、GLOBAL NOTE®『世界のコーヒー豆 生産量 国別ランキング・推移』(世界のコーヒー豆 生産量 国別ランキング・推移 - GLOBAL NOTE)
※世界三大コーヒー ジャマイカ ブルーマウンテン、ハワイアン コナ、タンザニア キリマンジャロ